HOME > トップトレーナー > 山口大輔さん | NBAチャンピオンチームで7年間活躍した彼にインタビュー

山口大輔さん | NBAチャンピオンチームで7年間活躍した彼にインタビュー

2014年11月12日

石塚です。
今日は、ATC山口大輔さんのインタビューをお送りします。彼はNBAチャンピオンチームを長年にわたってサポートしてきました。

この夏、シーズンが終わったばかりの彼の所属するNBAチームのトレーニング施設を訪問しておりました。
その際にうかがった「山口大輔インタビュー」をお送りします。

CIMG1875トリミング

Q. チームとしては7年ぶりのNBAチャンピオン、山口大輔さんとしてもアスレティックトレーナーとしてNBAチャンピオンになられましたね。

A. 7年前に下部組織に入りました。僕が入った直前にトップチームがNBAで優勝して、それまでも数年に一度くらいのスパンで優勝していましたから、当たり前のことと思われていたんですね。しかし僕が入って以来ずっと優勝できなかったんで。冗談でキミのせいだ、といわれたこともあったくらい(苦笑)。一昨年トップチームに入って、NBAカンファレンスファイナルで負けて、去年は決勝で負けて本当に悔しかったです。
今シーズンの初めに、選手、コーチ、スタッフ全員一丸となって、ケガを可能な限り少なくしてファイナルに行くぞと決意しました。口にはあえて出しませんでしたが、必ず勝つという執念をもって、それで優勝したからとても嬉しかったです。
当たり前ですが、決勝へ行くことと優勝することはまったく違うと感じでいました。人気NBAでもメディアで取り上げられるのも話すのは優勝チームのことばかり。結局優勝しないと意味ないかな、と思っていました。優勝パーティーも、勝ったから本当に楽しめた。心底リラックスできて嬉しかった。その意味でも最高のシーズンでした。

Q. 今年NBAで優勝できたのはチームとして選手のコンディショニングを常にいい状態で戦えたからだと思いますけども、アスレティックトレーナーとして何か特別なことをされたのでしょうか。

A. NBAだからといって特別なことはしていません。しかし、ここ何年か続けていることではありましたが、シーズン中を通して常に選手のカラダの状態を把握するようにしました。選手の硬い部分を動かしてやれるようにしたり、衝撃を吸収してケガがないように。アイデアとしては新しくないけれど、足掛け8ヶ月にわたるNBAの1シーズンを通してコンスタントにやり続けた。これは僕一人では無理で、チーム全体の取り組みがしっかりしていないとできないと思うので、チームのみんな同じ方向を向いてやった成果です。休みもほとんどないくらい忙しくてタフなシーズンでしたが、一人一人の状態の把握をコミュニケーションをとってやり通せたというのが成功につながったんだと思います。

Q. 選手のコンディショニングやカラダのケアで最も大切にしていることはなんですか。

A. NBAに限らずプロのスポーツシーンだとシーズンを通してケガをなくすことが最大のキーになります。ですので、リカバリー(疲労回復)にもっとも注力します。NBAはレギュラーシーズンで82試合、6ヶ月ずっと、2日に1回は試合のある計算になります。そして遠征。この中で、どうやってリカバリーをするか。マッサージがあったり、コレクティブエクササイズ(関節を柔らかくし、全身を上手く使えるようにするエクササイズ)、ストレッチ、カラダの硬い部分を緩める、セラピストを呼んだり、リカバリーブーツ、リカバリーソックスなんかも使ったり、あとは血液検査をしてカラダの状態をどうやってベストな状態にしていくのか、という…。そういう点でリカバリーにかける労力がすごいですね。

Q. バスケットボールにおいて、コアとは重要だと思いますか。

A. はい、バスケに限らず、どのスポーツでも重要でしょうね。カラダの基盤になる部分ですし、ズレが生じるとき、根本はコア。すごく大まかな言い方だけれども、コアの部分は重要だと思います。どんなに腕や脚が強かったとしても。脚、腰…、足首も重要ですけど、コアがしっかりしていないとちゃんと力も伝わらないし、そのぶんムダな動きになるので、ケガが起きやすくなりますからね。

Q. 今日、コアコンディショニングの一つ、ベーシックセブンを体験してもらいましたが、いかがでしたか。

A. いいと思います。いろんな手法が世の中にはあふれていて、僕はピラティスも勉強したけども、ピラティスでは、キューという手法を使います。カラダのここを意識しながら、これをやらせてとなるわけですが、意識するポイントが多くて、けっこうアメリカのプロのアスリートにとっては、めんどくさいことになっちゃってやりにくいと感じていました。
でもストレッチポールに乗ることは、その乗る時点でなんらかのフォーカスをもっていかなくちゃならないし、乗っていることがなんらかのキューイングに繋がる。それがわかったのと、あとシンプルなエクササイズの中でもちょっとした気づき…。それは言葉によるキューイングではなく、無意識のうちで誰もがバランスをとったりする中で、エクササイズやストレッチすることで理想的な状態に持っていきやすい、使いやすいっていうのが見ていて正直な印象でした。
リラックスするだけじゃなくて、呼吸のエクササイズにしても、体幹のエクササイズにしても関節の可動を出すことにても、ある程度、カラダを理想的な状態にもっていった上でやれる印象があったので、いいと思いました。

Q. NBAのようなプロのトップバスケットボール選手でも、筋肉のバランスが崩れていたりするんでしょうか?

A. 崩れている選手が多いですね。コアのエクササイズをしても、コアのさらに奥の筋肉、それを使えるようににしたいと思っても、なかなかできない選手も多いんです。一般的なプランクの動きをやっても、外側の筋肉ばかり使って、深部の筋肉を使えていない。そういう状況がたくさんあるんです。そこで言葉による意識付けで教えようとすると、選手たちは嫌がったり、なんでそんな細かいことするんだ、ってなりやすいんです。こういうストレッチポールを使ってカラダの深部の筋肉を活性化させてやるっていうアイデアは、とてもいいし、バスケットボール選手にとっても必要だと思いますね。

Q. 今日本で頑張っている子供たち、若いアスリート,そしてNBAやオリンピックを目指している選手にひとこと

A. アメリカに来て思うことは、なんでアメリカ人はこんなに大きくて、強くて、こんなに動けるのか。仮に同じアジアを見ても韓国の選手、中国の選手は体格がしっかりしてるな、と思いますね。何が原因かは難しいのですが、日本は女の子が、細くて草食系のオシャレな男子が好きだということが関係あるんじゃないか、と(笑)。オシャレはいいと思うんですが、カラダづくりをきちんとやって、しっかり歩けて、良い姿勢を持って、よく動ける。そういう人になれば、たくさんのいいトレーナーがいるから、そういう方のメソッド、トレーニング方法、学ぶ機会を経て、強くなって欲しい。小さい時から大きくなって、若い時からがんがんやっちゃって将来世界に通用するアスリートがたくさん育ってくれることを願っています。絶対できると思うので、僕らも若い人たちががんばれるようにサポートしていきたいと思うのでよろしくお願いします。

トップトレーナーの最新記事一覧

もっと見る